ごあいさつ
信頼性の高い調査を目指して
この研究は、東京電力福島第一原子力発電所の事故収集作業で、労働者の放射線緊急被ばく限度が引き上げられた最初の9か月間緊急作業に従事した約2万人の方々を対象にして、国の補助を受けて、長期的な健康調査・支援を目的として実施しております。緊急作業者の皆様は、この調査研究による無料の健診を定期的に受診していただけます。ご参加により、疾病等の早期発見のみならず、退職後を含めた将来にわたり、ご自身の健診情報履歴に基づく的確な健康支援を受けていたただくことができます。また、この調査研究によって得られる知見は、今後、世界中の放射線作業従事者のみならず、一般市民の放射線ばく露に対する安全と健康を守ることにも役立つと期待されます。
上記事故に対する緊急作業中は、原則として個人別に日々の放射線量が測定されており、過去の世界各国における類似事故の疫学研究に比べ、より高い精度で放射線リスクの推定ができると期待されています。また、調査対象とする健康影響の範囲については、これまであまり調査されていなかった心理的影響などまで含まれております。
この研究対象者の緊急作業終了後の所在は、すでに全国各地の拡散しております。したがって、健康状態を長期的に標準的な方法で調査・支援するためには、全国的な調査組織が必要です。現在のところ、別掲いたしました医療機関77か所のご協力による調査体制を確立しております。血液などの検体は1か所の検査室で測定するなど、標準化されておりますので、全国どこでも同じ精度の健診を受診していただくことができます。また、同意の得られた検体の一部は長期冷凍保存されており、将来、新たな検査が必要になった場合にも対応できます。
平成30年度までの5年間で第1期が終了し、今年度から第2期5年間に入りました。今期から、(独法)労働者健康安全機構・労働安全衛生総合研究所が研究統括組織となりましたが、私が引き続き責任者をお引き受けすることになりました。新たな組織で、研究参加者の増加など、さらに本研究の充実に努める所存ですので、今後ともよろしくお願いいたします。
独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所
労働者放射線障害防止研究センター長
大久保 利晃